食べログ・エキテンの誹謗中傷で店舗が被害を受けた場合の削除依頼と発信者開示請求の手順
飲食店・美容サロン・クリニック・士業事務所など、口コミレビューが集客を大きく左右する業態にとって、食べログやエキテンなどに書かれた虚偽や悪質な低評価レビューは、売上に直結する深刻なリスクです。特に「料理に髪の毛が入っていた」「スタッフの対応が最悪」といった事実無根の書き込みは、放置すれば毎月数十件の新規客を失う原因にもなります。本コラムでは、店舗運営者が口コミレビューサイトで誹謗中傷被害を受けた際に、削除依頼と発信者情報開示請求をどう進めるべきかを、実務の流れに沿って整理します。
レビューサイトの誹謗中傷が店舗に与える影響
飲食店・クリニックなどの業態では、新規顧客の7〜8割が来店前にレビューサイトを確認すると言われています。ここで虚偽レビューが1〜2件あるだけで、評価点数が0.2〜0.3下がり、検索順位が大きく後退するケースが珍しくありません。
- 食べログの点数が3.5から3.2に下がっただけで予約数が半減した事例
- エキテンで1件の悪質レビューを載せられ、指名予約が週10件減少した美容サロン
- Google口コミと食べログ双方で同一人物に連投され、3か月で客足が激減したラーメン店
こうした被害は単なる「気分の問題」ではなく、具体的な損害賠償請求の対象になり得ます。
削除が認められる誹謗中傷の基準
すべての悪いレビューが削除対象になるわけではありません。削除・開示の対象となるのは、事実と異なる内容、もしくは店舗の名誉・信用を不当に毀損する表現です。
削除が認められやすいケース
- 事実無根の内容(例:「異物混入があった」という架空の主張)
- 来店していない人物による創作レビュー
- 元従業員・同業他社と思われる業務妨害目的の投稿
- 個人への中傷(「店長はクズ」「薬剤師が無資格」など)
- 他店舗と混同した明らかな誤投稿
削除が難しいケース
- 「味が好みではなかった」など主観的な感想の範囲内
- 「値段が高い」「量が少ない」といった事実に基づく評価
- 接客態度への正当な批評(事実に基づくもの)
「単に評価が低い」というだけでは削除・開示は認められないという点を、最初に整理しておく必要があります。
食べログでの削除依頼の手順
食べログは独自の「口コミガイドライン」を設けており、違反投稿は運営判断で削除されます。店舗会員でなくても削除依頼は可能です。
1. 店舗会員アカウントから申請する場合
店舗会員として登録していれば、店舗管理画面の「口コミへの返信・通報機能」からガイドライン違反の通報ができます。通報時には、具体的な違反理由(事実誤認・業務妨害・特定個人への中傷など)を明記することが重要です。
2. 非会員・未契約店舗からの申請
店舗会員に登録していない場合は、食べログのヘルプ内にある「口コミに関するお問い合わせフォーム」から、店舗運営者であることを証明する書類(営業許可証・会社登記簿など)を添えて申請します。返信には通常1〜3週間かかります。
3. 代理人弁護士を通じた削除請求
運営判断で削除されなかった場合、弁護士を通じて発信者情報の開示仮処分申立てと同時に削除を要請する方法があります。裁判所の関与があると、食べログ側の対応も迅速になる傾向があります。
エキテン・ホットペッパー・Retty など他サイトの対応
口コミサイトごとに削除基準・申請窓口が異なります。
- エキテン:事業者管理画面から「違反報告」、または運営会社デザインワン・ジャパン宛に書面で削除要請
- ホットペッパービューティー/グルメ:リクルート社のサポート窓口経由で削除依頼。美容・クリニック系はとくに審査が厳しい
- Retty:運営への直接問い合わせフォームあり。実名登録制のため比較的削除が通りやすい
- EPARK:医療機関・歯科・薬局系。医療広告ガイドラインに抵触するレビューは削除対象
複数サイトに同時期に類似投稿が出ている場合は、同一人物による組織的な業務妨害の可能性が高く、まとめて弁護士に依頼した方が効率的です。
レビューサイトへの発信者情報開示請求の流れ
削除だけでは解決しないケース、すなわち損害賠償や業務妨害罪での告訴を視野に入れる場合は、発信者情報開示請求を進めます。
ステップ1:レビューサイト運営会社への開示請求
食べログ(カカクコム)、エキテン(デザインワン・ジャパン)、リクルートといった運営会社に対して、裁判所を通じ投稿者のIPアドレス・タイムスタンプの開示を求めます。2022年改正以降は、後述の「発信者情報開示命令」を使うことで、手続きが1段階に集約できます。
ステップ2:アクセスプロバイダへの開示請求
取得したIPアドレスを元に、NTT・KDDI・ソフトバンクなどのアクセスプロバイダに対して契約者氏名・住所の開示を求めます。法人契約や共有Wi-Fiが絡む場合は、追加の調査が必要になることもあります。
ステップ3:発信者情報開示命令(新制度)の活用
2022年10月施行の改正プロバイダ責任制限法で新設された「発信者情報開示命令」制度を使うと、1つの手続きでコンテンツプロバイダとアクセスプロバイダ双方に開示を命じることが可能です。店舗トラブルの案件でも、短期決着を目指すならこの制度を軸に進めるのが主流になっています。
開示請求に進む前に確認すべき4つのポイント
店舗経営者の立場で開示請求を検討する際、事前に確認すべきポイントがあります。
被害発生からの経過期間:ログ保存期間が3〜6か月のため、可能な限り1か月以内に動き始める
同一人物による複数投稿の有無:共通点がある投稿は一括で開示請求することで費用対効果が高まる
被害額の試算:予約数の減少・売上減・広告費追加分など、損害賠償の根拠になる数字を整理しておく
従業員・元従業員の関与の可能性:内部情報が含まれる投稿は、就業規則違反や競業避止義務違反として別途対応できる
弁護士に依頼した場合の費用・期間の目安
店舗案件での発信者情報開示請求を弁護士に依頼する場合、費用と期間の相場は以下の通りです。
- 新制度(開示命令)利用時の期間:約4〜8か月
- 従来の仮処分+訴訟方式:約6〜12か月
- 弁護士費用の着手金:20〜40万円
- 成功報酬:30〜60万円(開示成功+損害賠償金額に応じて変動)
- 削除のみの場合:着手金5〜15万円、成功報酬5〜15万円程度
店舗側が損害賠償で回収できる金額は、悪質性や被害額によって30万円〜数百万円と幅があります。業務妨害が明確で売上減少も立証できる場合、慰謝料的な側面よりも「逸失利益」として認められる金額の方が大きくなる傾向があります。
店舗側ができる日常的な予防策
被害を最小化するため、日常運営のなかで取り組める予防策もあります。
- レビューサイトの店舗情報を整備し、公式返信を丁寧に行う(悪質投稿の抑止効果)
- 来店記録・予約履歴を残しておく(「来店していない人物からの投稿」立証に使える)
- 防犯カメラ映像を1か月以上保存する
- 競合他社や退職者による投稿が疑われる場合は、早期に法的措置の準備を始める
- 法人向けの「ネット炎上保険」の加入も検討する
まとめ:レビューサイトの誹謗中傷は「初動」がすべて
食べログ・エキテンなどレビューサイトでの誹謗中傷は、店舗の売上に直接影響するため、発見から1か月以内の初動が決定的に重要です。まずは運営会社に削除依頼を行い、通らない場合は弁護士を通じて発信者情報開示命令による手続きへ進むのが、2026年現在の標準的な流れです。悪質投稿を放置することは、競合や退職者に「やっても大丈夫」と思わせる逆効果を生みます。店舗を守るためにも、早期に専門家へ相談し、削除と発信者特定を並行して進めましょう。
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この記事の著者
開示請求Navi 編集部
発信者情報開示請求・ネット誹謗中傷対策に関する情報を、弁護士・司法書士・IT調査会社などの専門家と連携して発信しています。正確で実践的な情報をお届けすることを使命としています。