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開示請求Navi2026年4月22日

発信者情報開示命令とは?2022年改正の新制度の仕組みと従来の仮処分・訴訟との違いを徹底解説

「発信者情報開示命令」という言葉は、2022年10月の法改正で新たに登場した裁判手続きです。ネット上の誹謗中傷対策を進めるうえで、従来の仮処分+訴訟方式とどちらを選ぶべきかは、被害者にとって最初に突き当たる判断ポイントになります。本コラムでは、新制度の仕組み・3つの命令の連携・メリットとデメリット・適するケースの見分け方までを、実務的な観点から整理します。

2022年法改正で何が変わったか

改正前、発信者情報開示請求は「仮処分+訴訟」の2段階で進める必要がありました。

  • ステップ1:コンテンツプロバイダ(SNS運営会社)へ仮処分申立て → IPアドレス取得
  • ステップ2:アクセスプロバイダ(ISP)へ訴訟提起 → 契約者の氏名・住所取得

この流れは合計6か月〜1年以上かかるうえ、アクセスプロバイダのログ保存期間(3〜6か月)を超えてしまうケースが多く、「手続きが終わる前にログが消えて特定できなくなる」問題が深刻化していました。

2022年10月1日施行の改正プロバイダ責任制限法(現・情報流通プラットフォーム対処法)により、非訟手続による「発信者情報開示命令」が新設され、この問題の解決が図られました。

発信者情報開示命令とは

発信者情報開示命令は、1つの裁判手続きの中で、コンテンツプロバイダとアクセスプロバイダ双方に対して開示を命じることができる非訟事件です。訴訟と違い、公開法廷での弁論を経ずに書面中心で判断が下されるため、手続きが迅速に進みます。

ポイントは以下の通りです。

  • 非訟手続のため、通常訴訟より1〜3か月早く判断が出る
  • 両プロバイダを一括で扱えるため、二度手間にならない
  • 決定に不服があれば、異議の訴えを通じて通常訴訟に移行可能
  • 海外プラットフォーム(X、Meta、Google、ByteDanceなど)にも対応

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新制度を支える3つの命令

新制度は実務上、単独の「開示命令」だけで機能するのではなく、3つの命令が連携して発信者を特定するパッケージになっています。

1. 発信者情報開示命令

コンテンツプロバイダ・アクセスプロバイダに対して、保有する発信者情報(IPアドレス・契約者氏名・住所など)の開示を命じる中心的な命令です。

2. 提供命令

コンテンツプロバイダに対して、「どのアクセスプロバイダを経由して投稿されたか」を被害者に提供するよう命じる命令です。これにより、被害者は次にどのISPへ開示請求すべきかを早期に把握できます。従来は、IPアドレス取得 → 自分でISPを調査、という手間が必要でしたが、この命令で手続きが一気にスムーズになりました。

3. 消去禁止命令

アクセスプロバイダに対して、発信者情報(通信ログ)を消去しないよう命じる命令です。ログ保存期間内に手続きが終わらず、肝心のログが消えてしまうリスクを防ぐ役割を果たします。

この3つがセットで運用されることで、「ログが消える前に確実に発信者を特定する」仕組みが実現しています。

従来の「仮処分+訴訟」との違い

新制度と従来方式の主な違いを整理します。

  • 手続きの数:新制度は1つ、従来は2つ
  • 審理方式:新制度は書面中心の非訟、従来は口頭弁論を伴う訴訟
  • 期間:新制度は4〜8か月、従来は6〜14か月
  • 費用:新制度は申立費用が比較的低額、従来は訴訟印紙代が加算
  • 公開性:新制度は非公開、従来は公開法廷
  • 異議手段:新制度は異議の訴え、従来は控訴・上告

ただし、「新制度=常に有利」とは限らず、ケースによっては従来方式の方が適する場面もあります。

新制度を使うべきケース・従来方式のほうが良いケース

新制度が適するケース

  • ログ保存期間が迫っており、スピード勝負になる案件
  • 投稿内容が明白に権利侵害で、争点がシンプル
  • コンテンツプロバイダ・アクセスプロバイダ双方が日本の法律に対応済み
  • 被害者が個人で、早期の金銭解決を優先したい

従来方式が適するケース

  • 権利侵害の明白性が微妙で、詳細な主張立証が必要
  • 複雑な事実関係があり、口頭弁論での主張が有利
  • 相手方プロバイダが異議を出すことが確実で、どのみち訴訟化する
  • 事業者案件で、徹底的に争う姿勢を示したい

実務では、9割近い案件で新制度が選ばれている傾向がありますが、争点の複雑さによっては経験豊富な弁護士が従来方式を選ぶケースもあります。

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新制度での手続きの流れ

新制度を使った場合の標準的な流れは以下の通りです。

1

証拠保全とスクリーンショット取得(被害発生から1〜2週間)

2

弁護士への相談・依頼(1〜2週間)

3

コンテンツプロバイダへの開示命令・提供命令の申立て(地方裁判所)

4

裁判所からコンテンツプロバイダへの審尋・決定(1〜3か月)

5

提供命令によりアクセスプロバイダが判明 → 消去禁止命令申立て

6

アクセスプロバイダへの開示命令申立て(1〜2か月)

7

発信者情報の開示・特定完了

8

示談交渉または損害賠償請求訴訟

トータル4〜8か月程度で発信者特定まで到達できるのが、新制度の大きな利点です。

申立てに必要な書類と費用

新制度での申立てに必要な主な書類と費用は以下の通りです。

  • 申立書(請求の趣旨・原因・権利侵害の明白性の主張)
  • 疎明資料(スクリーンショット・URL一覧・投稿日時の記録)
  • 権利侵害の具体的主張書(名誉毀損・プライバシー侵害など法的構成)
  • 印紙代:1件1,000円(提供命令と併せて申立てる場合は別途)
  • 予納郵券:数千円程度
  • 弁護士費用:着手金20〜40万円、成功報酬30〜60万円

海外プラットフォームが相手の場合、翻訳費用・送達費用として5〜15万円程度の実費が加算されます。

新制度でも注意すべき落とし穴

新制度は万能ではなく、以下の点には注意が必要です。

  • 権利侵害の明白性の要件は従来と同じ:新制度だから通りやすいわけではない
  • 異議の訴えで通常訴訟に移行するリスク:プロバイダが争う姿勢を見せた場合、結局訴訟化する
  • 海外事業者の場合、送達に数か月かかるケースがある
  • 証拠の作り込みが甘いと、新制度でも棄却される
  • 費用は「安い」わけではなく、実費は従来とほぼ同等

「新制度=必ず勝てる」「新制度=安くて早い」という誤解で依頼すると、想定外の時間と費用がかかるリスクがあります。

弁護士選びで確認すべきポイント

新制度はまだ実務運用が定まりきっておらず、弁護士によって経験差が大きい分野です。依頼前に以下を確認しましょう。

  • 2022年10月以降の開示命令の取扱い実績数
  • 提供命令・消去禁止命令をセットで使いこなせるか
  • 海外プラットフォーム相手の対応経験
  • 異議の訴えへの移行シナリオを事前に説明できるか
  • 料金体系が開示成功までを前提に設計されているか

特に1と2は、単に「開示請求の経験がある」と言う事務所と、実際に新制度で成果を出している事務所の差を見分ける重要な質問です。

まとめ:新制度は「スピード重視」の主力手段

発信者情報開示命令は、2022年改正によって導入されたスピード・効率を重視した新ルートです。従来の仮処分+訴訟方式と比べて、1〜3か月の時短効果ログ消去リスクの低減という大きなメリットがあり、2026年現在は多くの誹謗中傷案件で第一選択となっています。ただし、権利侵害の明白性の要件は従来と変わらず、証拠の作り込みと権利侵害の法的構成が成否を決める点は共通です。新制度の特徴を理解したうえで、自分のケースに適した手続きを選択できる弁護士に依頼することが、発信者特定への最短距離になります。

この記事の著者

開示請求Navi 編集部

発信者情報開示請求・ネット誹謗中傷対策に関する情報を、弁護士・司法書士・IT調査会社などの専門家と連携して発信しています。正確で実践的な情報をお届けすることを使命としています。

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