ネットで住所・電話番号・本名を晒された(ドキシング)緊急対応マニュアル|発信者情報開示請求と警察相談の手順【2026年版】
はじめに
「Xで自宅住所と本名を晒された」「5chに勤務先と顔写真を貼られた」「爆サイに電話番号が書かれ深夜に無言電話が続いている」「SNS上で家族構成・通学先まで暴露された」――こうした個人情報晒し(ドキシング/doxing)は、近年ネット誹謗中傷の中でも最も深刻化している類型のひとつです。
ドキシングは単なる誹謗中傷を超え、プライバシー権侵害・名誉毀損・ストーカー規制法違反・業務妨害罪など複数の違法性を併せ持ち、二次拡散によりストーカー被害・押しかけ・嫌がらせ電話・郵便物悪用にまで発展します。最悪の場合、生命・身体への危険にもつながるため、通常の誹謗中傷より迅速で多面的な対応が必要です。
本記事では、ドキシングの法的位置付け、緊急24時間対応の優先順位、検索エンジン経由の削除戦略、発信者情報開示請求の迅速化、警察への通報・保護要請、損害賠償と慰謝料相場を2026年最新基準で詳しく解説します。
ドキシング(doxing)の法的位置付け
定義
ドキシング(doxing/doxxing)とは、特定個人の住所・電話番号・実名・勤務先・家族構成・写真などの個人情報を、本人の同意なくインターネット上に公開する行為。「dropping docs(書類を落とす)」が語源。
該当する違法行為
| 法的構成 | 内容 |
|---|---|
| プライバシー権侵害 | 民法709条(不法行為)、最判平15.9.12(長良川事件)等 |
| 個人情報保護法違反 | 第三者提供禁止違反(適用は事業者向け中心) |
| 名誉毀損罪 | 刑法230条(実名と虚偽情報の組合せの場合) |
| 侮辱罪 | 刑法231条(情報晒しに侮辱的言辞を伴う場合) |
| ストーカー規制法違反 | 「つきまとい等」「住居等の押し掛け」の前提行為 |
| 業務妨害罪 | 刑法233条・234条(勤務先晒し→嫌がらせ電話を誘発) |
| 脅迫罪 | 刑法222条(「住所知ってるぞ」と暗示する場合) |
| 不正アクセス禁止法違反 | 個人情報を不正取得した場合 |
| 児童ポルノ禁止法違反 | 未成年者の場合 |
民事上の請求権
- 削除請求権(人格権・プライバシー権)
- 発信者情報開示請求権(プロバイダ責任制限法5条)
- 損害賠償請求権(民法709条・710条)
ドキシングが引き起こす典型的な二次被害
二次被害①:ストーカー・押しかけ
晒された住所を見た悪意ある第三者が直接押しかけたり、近隣で待ち伏せするケース。物理的危害のリスク大。
二次被害②:無言電話・嫌がらせ電話の急増
電話番号晒しの結果、深夜の無言電話・脅迫電話が連続発生。家族や同居人にも影響。
二次被害③:宅配便・出前テロ
「ピザを大量に注文」「家具を勝手に発注」など、注文型嫌がらせで生活が破綻。
二次被害④:勤務先への嫌がらせ
晒された勤務先に苦情電話・FAX攻撃・直接訪問が殺到し、退職に追い込まれる事案。業務妨害罪の典型。
二次被害⑤:家族・親族への波及
家族の住所・通学先まで暴露され、子供のいじめ・配偶者の職場トラブルまで波及。
二次被害⑥:金融詐欺・なりすまし犯罪利用
晒された個人情報を悪用した詐欺・不正口座開設・なりすまし犯罪に発展する事例も。
緊急24時間対応の優先順位
ドキシング被害発覚時は、通常の誹謗中傷以上にスピードが重要です。
0〜2時間:証拠保全
該当投稿のスクリーンショット(URL・日時・アカウント名を含む)
Web archive・archive.todayでのアーカイブ保存
二次被害のログ(着信履歴・受信メール・宅配記録)も同時記録
2〜6時間:投稿元への削除要請
| プラットフォーム | 削除フォーム |
|---|---|
| X(旧Twitter) | プライバシー侵害報告フォーム |
| Instagram/Threads | Metaヘルプセンター |
| 5ch・爆サイ | 各掲示板の運営フォーム |
| YouTube | プライバシー苦情報告 |
| TikTok | プライバシー違反通報 |
| LINE | LINEセーフティセンター |
6〜12時間:警察への被害届・相談
最寄りの警察署または都道府県警サイバー犯罪対策課へ相談。ストーカー規制法による警告・禁止命令の申請も検討。生命・身体の危険があれば110番直接通報も。
12〜24時間:弁護士相談・仮処分準備
ネット問題に強い弁護士に相談し、投稿削除仮処分・発信者情報開示命令の準備を開始。
検索エンジン経由の削除戦略
晒し投稿が拡散して検索結果で本名・住所が表示される状態になっていれば、検索エンジン側への削除請求も並行します。
Google検索結果の削除
- Googleの個人情報削除ポリシー(住所・電話番号・本名等を含む結果は削除対象)
- 「Google検索からの個人情報の削除」フォームから申請
- 申請理由を具体的に記載し、URL・スクショを添付
Yahoo!検索の削除
Yahoo!Japan独自の削除請求フォームを利用。プライバシー侵害として申請。
Bing検索の削除
Microsoftの削除リクエストフォームで申請。
直接の投稿削除と並行で進める意義
投稿元の削除に時間がかかる場合でも、検索結果から消えることで二次被害を大幅減少。SEO的なドキシング情報の拡散も防止できます。
発信者情報開示請求の手順
ステップ①:開示命令の申立て(2022年改正法)
東京地裁に発信者情報開示命令申立てを提起。提供命令・消去禁止命令を同時に申立てることで、ログ消去リスクを抑えます。
ステップ②:意見照会への対応
サイト運営者から発信者本人へ意見照会が行われます。発信者が拒否しても、ドキシング事案ではプライバシー権侵害の重大性が認められやすく、開示認容率は通常案件より高い傾向。
ステップ③:IPアドレスの取得→経由プロバイダの特定
開示されたIPアドレスから経由プロバイダ(NTT・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイル等)を特定。
ステップ④:経由プロバイダへの開示請求
経由プロバイダに対し、IPアドレスから契約者氏名・住所の開示請求を実施。
ステップ⑤:発信者特定後の対応
- 内容証明郵便で損害賠償請求
- 刑事告訴(名誉毀損罪・侮辱罪・ストーカー規制法違反・業務妨害罪等)
- 接近禁止仮処分の申立て(必要に応じて)
重要判例
長良川事件(最判平15.9.12)
少年事件報道における個人特定情報の公表につき、プライバシー権侵害の不法行為性を肯定。
住所晒し損害賠償事件(東京地判令2.10.8)
X(当時Twitter)で住所を晒された被害者に対し、慰謝料100万円超を認容。
早稲田大学江沢民講演会名簿事件(最判平15.9.12)
参加者の氏名・住所・電話番号の名簿提供をプライバシー侵害と認定。情報の組み合わせによる侵害性を強調。
Twitter情報削除請求事件(最判令4.6.24)
Twitter(現X)上の過去の犯歴記事へのリンクツイートの削除を肯定。個人特定情報の継続表示の違法性を判示。
個人情報無断公開事件(東京高判平28.7.21)
匿名掲示板での住所・氏名・勤務先の無断公表につき、慰謝料300万円超の高額認容。
警察への相談と保護要請
ストーカー規制法の活用
「特定の者に対する恋愛感情等を充足する目的」でなくとも、改正ストーカー規制法(2017年改正・2021年改正)の運用拡大により、ネットつきまとい・住所暴露も対象に含めうる解釈が広がっています。
警察に持参すべき書類
- 該当投稿のプリントアウト・スクショ
- 着信履歴・嫌がらせメールの記録
- 押しかけ・宅配テロ等の被害ログ
- 警察相談記録(過去にあれば)
緊急避難の判断
身の危険を感じた場合は、警察の助言を受けつつ短期間の親族宅・ホテル避難を検討。シェルター制度の利用も。
損害賠償・慰謝料の相場
| 内容 | 相場 |
|---|---|
| 住所のみ晒し(少数フォロワー) | 30万〜100万円 |
| 住所+実名晒し | 100万〜200万円 |
| 住所+実名+顔写真 | 200万〜400万円 |
| 家族情報まで晒し | 300万〜500万円 |
| 二次被害(押しかけ・嫌がらせ多数)あり | 500万円〜1,000万円超 |
| 業務妨害・退職に至った場合 | 慰謝料+逸失利益で1,000万〜数千万円 |
| 転居費用・引越費用 | 数十万〜数百万円(実費請求) |
よくある質問(Q&A)
Q1. すでに無言電話が始まっています。どうすれば?
A. ①番号通知設定の変更・着信拒否、②110番または警察相談ダイヤル#9110、③通信会社(NTT等)にナンバーディスプレイ+着信お断りサービス申込み、④記録を継続して証拠化。
Q2. 既に住所を晒されてしまいました。引越すべき?
A. 緊急性・経済性・家族構成で個別判断。判例上、転居費用・引越費用も損害賠償対象となる事案多数。安全を最優先しつつ証拠を残してください。
Q3. 警察が「ネットの話だから」と取り合ってくれません。
A. サイバー犯罪対策課へ直接相談、または弁護士同行で再度申告。被害届を文書で受理するよう求めましょう。
Q4. 投稿者が海外在住・VPN利用のようです。
A. 困難ですが諦めないでください。ログイン時IP・端末情報・支払情報から特定するルートあり。国際的協力による特定実績もあります。
Q5. ドキシングと匿名性のバランスは?
A. 加害者の匿名性はプライバシー権侵害の重大性の前で大幅に後退します。表現の自由の範囲外として開示認容率が高い類型です。
Q6. 会社の同僚が職場のドキシング被害に遭いました。会社として対応できますか?
A. 会社の安全配慮義務(労契法5条)として対応が必要。法人としての業務妨害罪の被害届、社員のサポート、必要に応じた配転・在宅勤務の検討。
まとめ
ドキシングは単なる誹謗中傷を超え、生命・身体への危険を伴う深刻な犯罪行為です。
24時間以内の証拠保全+削除請求+警察相談を並行進行
検索エンジン経由の削除で二次被害を抑制
2022年改正開示命令で迅速に発信者特定→刑事・民事の二段構え
「自分にも非があるかも」「騒ぐと逆効果かも」と躊躇せず、生命・身体を最優先に動いてください。ネット問題に強い弁護士・警察・支援団体が連携してあなたを守ります。
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この記事の監修者
開示請求ポータル 編集部(IT・ネット問題専門弁護士監修)
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この記事の著者
開示請求Navi 編集部
発信者情報開示請求・ネット誹謗中傷対策に関する情報を、弁護士・司法書士・IT調査会社などの専門家と連携して発信しています。正確で実践的な情報をお届けすることを使命としています。